本当の戦争を知らない

安全保障法制の見直しを期に、安倍首相への批判が高まっているが、的外れな議論が多く、聞くだけで辛い。典型的な例は自身の戦争体験に照らして、安倍首相は戦争の悲惨さを知らない、となじるものだ。悲惨な戦争を知らないから、戦争法案を作ることが出来る、イヤイヤ、ちょっと考えよう。

戦争がどうやって始まったのか、そこを考えよう。戦争が悲惨なのは、誰でも知っている。自分だけが知っている、などと考えないことだ。戦争体験は貴重なものだが、取り立てて珍しいものでも無い。

彼らが、今の政治情勢が大戦前夜に酷似している、と実体験をもって語る時、初めて経験が意味を持つ。悲惨だというだけでは響かない。何故戦争が始まったのか、これは一言では収まらないが、法が軍を規制出来なかった、という一面は確実にある。どのように規制するか、これは良く良く詰めておかねばならない。想定される事態を細かく挙げて、何が出来るのか、何が出来ないのか、考え、分析し評価しなければ。

そうしなければ、コトが起こったとき、軍は法を破る。

今起こっているのは、そういう当たり前の感覚を無視して平和の夢に逃げ込んできた人々が少数派になりつつある、ということだ。

従って、野党が憲法違反、解釈改憲といくら叫んでも、膨張する中国、という事実の前に支持は広がらない。戦略が間違っているのだ。今回の解釈改憲が何故危険なのか、軍を規制する道具として何処が問題なのか、其処を論理だてて説明しないと、違憲、合憲の罠にハマって支持を失うだろう。